「ま、いいか!」くらいがちょうどいい

イギリス・レスターから帰国。シェアハウスでの暮らしの中から、日々の暮らし、ファンドレイジング、自身のHSPのこと、そして大好きなイギリスのことも引き続き書いていきます。

レスターライフ②歌、続けています。【後編:組織とファンドレイジング? 】

前編でレスターでのクワイアとの出会い、練習の様子について書きました。

レスターライフ①歌、続けています。【前編】 - イギリス・レスター便り

 

今回はその続きで、歌を歌いたくて入ったクワイアで、まさかのファンドレイジング について触れることになったこと、地域に密着したクワイアで、レスターにまさに暮らす人たちに出会えたからこそ、触れることができた貴重な経験について書いておこうと思います。

 

そもそも、私が入ったクワイアは「コミュニティ・クワイア」と言われる部類で、いわゆる「地域密着型の合唱団?」みたいな感じです。入ってびっくりしたのは、メンバーとは全く関係ない人のお葬式や結婚式での歌の依頼、そしてイギリスらしく「寄付のお願い」として歌って欲しいという依頼、そしてイベントでの出演依頼など、本当に地元に近いことでした。もちろん歌っているメンバーも、趣味でやっている人たちで、決して「プロ」ではありません。

 

●きちんとした「組織」

私の入ったクワイアは、なんと年に1回、総会がきちんとありました。歌を教えてくれるデイレクターお二人以外、代表、副代表、経理、事務局長など、ちゃんと選挙をして、選びます。今思うと、こうしたしっかりした組織だからこそ、私のメールへの返信も速かったのかな?とおもいました。

この総会でびっくりしたのは、出納記録だけでなく、その前の年にどれだけ「寄付」に貢献できたか、寄付先やその金額も共有されていること。その上で、「昨年は寄付額が少なかったから、もっとチャリティイベントに出よう」などの意見が出るほど、寄付が身近なんだなと気づかされました。

 

●私が最初に見たチャリティの現場は?

そんなクワイアでの練習のある日、メンバーの一人がチャリティランナーで走ることを説明し、「良かったら応援として寄付してほしい」と呼びかけたことでした。私は入って間もないしと躊躇していたのですが・・・、あっという間に皆さんお札や小切手を手渡していきます。それも皆さん30ポンド(約4500円)以上というほど。

びっくりしました。それだけ仲の良い関係なんだと思いつつ、前触れもなく寄付をする姿にはびっくりでした。

 

●イギリスのチャリティイベントの現状

実は、私もイギリスに来て、せっかくなので走ることはできないけど、チャリティのハイキングイベントに参加してみようかと検討をしていた頃がありました。しかし、どのイベントを見ても、驚いたのはその参加するためのハードルの高さでした。自身が参加するには、参加費の他に、自分が寄付する金額、そして集めてくる最低の寄付金額が書かれていることがほとんど。そのほとんどが300ポンド〜450ポンド(45,000~67,500円)。さらに、イギリスでよく見るのですが、ケーキなどを焼いて、人に来てもらって、そのケーキやお茶代を払ってもらい、寄付にするタイプのチャリティイベントも、同じようでした。

 

昨年、とあるファンドレイジング の勉強会に行った時、ワークショップで「今までにないイベントを考えてみよう」というお題があった時、様々なグループが考えたものの、出てくるものはチャリティマラソン、チャリティティーパーティ、どこかで見たものばかりで、私が「どうして他の人と違うものを考えようと思わないの?」と聞いた時、「そんなこと、考えたことないよ。同じようなイベントをしていれば、どれかにみんな興味を持つものだよ」と口々に言われたことを思い出しました。

確かに、チャリティハイキングのコースは寄付の団体に寄らずほとんど同じ。カップケーキの日があれば、たくさんのチャリティ団体が「カップケーキを焼いて寄付になるよ」と広報を始めます。

 

寄付が身近なのはとても良いけれど、「寄付をしてくれる人の思い」を大切にしたいと思っていた私には、想像もしていなかった現実がありました。

 

●チャリティコンサート

話をクワイアに戻します。

そんな中、レスターで一番大きなフェスティバルの中で、いわゆる野外ライブでの寄付を募るライブにクワイアも参加することになりました。このライブはいくつかのクワイアが一緒に参加し、毎年出ているもので、ここで集められた寄付は、とあるチャリティ団体への寄付になります。

というわけで、「自分が歌って、だれかがいいなぁと思ってくれて寄付してくれたら、素敵!」と思い、出るのを楽しみにしていました。

 

しかし。

思わぬ壁にぶち当たりました。なんと、一人目標30ポンド(4,500円)の寄付を集めてくるか、自分で寄付するかが参加条件にあったのです。

どうしよう・・・?

迷っているうちに、なんと練習の休憩時間に、「今年はクワイアでの寄付が少ないから、雑貨をこれからここに並べるから、欲しい人は持って行って、代わりに寄付をして」と雑貨バザーみたいなことが毎回行われるように。

 

確かに、こうしてリードしてくれる人がいるって、すごいパワーです。

でも、「寄付って”思い”じゃないのかな?歌で参加する私たちも”寄付”するのが、チャリティイベントなのか?」悩んでしまいました。

 

そんな悩む私の隣で、寄付を申し出た人のリストをメンバーがどんどん提出していく姿。特に「寄付の使途」の説明はなかったけれど、「チャリティ」ってすごいなぁと思いながら、時が過ぎて行きました。

 

ある日。

メンバーの中でも少し話をする人に、思い切って30ポンドについて聞いてみました。するとなんと・・・「私は人に寄付をお願いしたくないから、自分で払ったよ」と言うのです。恐る恐る、「私は、歌って出るのに、どうして寄付するのか、不思議なんだけど、文化の違い?」と聞いてみると、「あなたは正しいよ。変よ」と言ってくれた人もいました。挙句、「ずっと疑問だったのよ、外から来た人が言ってくれて嬉しいよ」と言われました。

ホッとしました。

 

どこに行っても、いろんな人がいて、いろんな考えがあることに触れることができ、何より、「ファンドレイジング が土台にある国・イギリス」の現実を知ることができました。

 

・・それで私は。

最後は寄付額を少し少なく出して、あとは雑貨バザーに貢献し、代わりにお茶の時間のお菓子を持って行き、だれか美味しいと言ってくれた人があれば、寄付にしてもらおうかと思います。

チャリティコンサートはもうすぐ。歌を楽しみつつ、チャリティのイベントの行方を体感してこようと思います。

そしてそして。私はやっぱり「思い」をつなぎ合う「人」でいたいな、そう改めて思う出来事でした。

 

でも、決してクワイアのメンバーは悪くないし、私もメンバーの優しさ、温かさが大好きです。この体験を通して、自分にとって「当たり前」と思っていることが、実は違う角度から見るとそうではないこともあるのかもしれない!ということを学びました。

私も気をつけて、いろんな人の意見に耳を傾けてみたいと思いました。